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自閉症患者が知人を忘れてしまいやすいのはなぜか? 海馬の異常が原因 創薬にも貢献 東大

マウスのShank3欠損のイメージ図、欠損マウスは記憶に異常をきたす

東京大学の奥山輝大准教授らのグループは、自閉症患者の友人を記憶する能力の低下が、空間や時間を貯蔵する「海馬腹側CA1領域」の異常に起因すると発見した。その知見を利用することで自閉症の新規治療薬の開発に貢献できる可能性があるという。英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に12日付の電子版に掲載されている。

自閉症の人は友人を記憶する能力が低くなっていると知られている。また、自閉症関連遺伝子「Shank3」に欠損を持つマウスは社会性記憶力が弱くなっており、特定の相手の記憶を保持する海馬の神経活動にも異常が生じていると先行研究で発見された。だが、それが海馬腹側CA1に起因するのかは不明であった。

健常なマウスは、知らない個体に長時間接近する性質を持つ。これを利用して、テストマウスが記憶するものとそうでないマウスに近づいた時間を測ることで、相手を覚えていたかを定量することができる。

このテストを行ったところ海馬腹側CA1領域でShank3遺伝子を欠損させたマウスは、社会性記憶に異常をきたすことが判明した。

奥山准教授らは「自閉症の社会性記憶異常という病態神経メカニズムの一端が明らかになり、臨床分野においても新規治療法の開発に寄与できる」としている。