筑波大学の大庭良介准教授らは、過去50年の間に世界で新たな研究内容の産出効率を上げた一方で、ノーベル賞級のものが生まれる可能性を下げていることが分かったと公表している。
研究グループは、生命科学・医学分野の最大の論文データベース「PubMed」を使って、53カ国で発表された3000万以上の論文を対象に研究トピックの変遷を分析した。
研究では1971~2020年までに論題の産出数と経済力の関係を分析した。その結果、経済成長に伴って、論文数と萌芽的、ノーベル賞級トピックの数が増加していた。他方、2000年以降はノーベル賞級の割合が低下。10年以降は新たなタイトルの量も少なくなった。これらの減少は経済力とは関係していなかったという。
各国間のトピックの類似度を比較すると、グローバル化によって多様性が失われ研究内容の画一化が起きていると判明した。研究トピックの類似度と萌芽的およびノーベル賞級トピックの効率には正の関係が認められる一方で、類似度とノーベル賞級タイトルが生まれる比率には負の相関が認められている。
大庭准教授らは「研究活動のグローバル化に伴う研究トピックの均質化が、萌芽的トピック産出の効率を向上させる反⾯、ノーベル賞級トピックの産出効率を低下させる要因である可能性がある」と説明。「ノーベル賞級トピックの産出には、むしろ、研究のガラパゴス化が重要であるということが⽰唆された」としている。