大阪公立大学の深津亜里紗助教らの研究グループは7日、塩と有機溶媒(有機物で液体にするもの)では氷が溶けるメカニズムに違いがあることなどを発見した。融氷剤の利用量や環境負荷の低減を可能にできるとしている。
融氷剤は寒冷な地域において、市街地の道路や屋根、空港の滑走路などの雪を溶かすために使われている。だが、塩化物を使用した融氷剤は、植物を枯れさせ土壌を固めてしまうといった課題があり、環境負荷の小さい薬物の開発が求められている。
融氷剤は浸透力が高ければ速やかに多くの氷を素早く溶かせる。そのためその力が大きいほど少量でたくさん溶かせると考えられ、その研究は環境負荷低減に貢献できる。研究では浸透力が高く高機能な薬の実現を目指して、機械学習を用いた融氷の解析と新規融氷剤の組成設計を行った。
研究グループは浸透力を精密に比較するため、氷点下でも一定温度を保つことができる装置を作製。21種類の塩の水溶液と16種類の有機溶媒の、氷への浸透力を測った。次に機械学習で、各試料の浸透力に影響を与える物質を解析している。
その結果、「凝固点降下」と「融氷剤と水分子の相互作用」、「氷結晶へのイオンの浸透」の融氷メカニズムが存在すると分かった。また、塩の水溶液と有機触媒を混ぜることで、浸透力の向上が見込まれるとしている。
そこで、有機溶媒でも負荷の小さいプロピレングリコール(PG)を選択し複数の塩類の水溶液と混合して浸透力を評価。ギ酸ナトリウム水溶液との混合物が最も高い浸透力を示した。
深津助教らは「研究で提案した混合物は、典型的な塩系融氷剤に比べて腐食作用が低く、有機系融氷剤に比べて酸素消費量が少ない」。そのため「除氷や防氷作業の簡便化や融氷剤の使用量削減による環境負荷の低減を可能とすることが期待できる」とコメントしている。