京都大学の工藤洋教授と湯本原樹特定研究員らのグループは、葉の老化制御の季節性に着目。常緑植物が夏と冬という対照的な季節をどのように生き抜いているのかについて明らかにした。7日付の英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」の電子版に掲載している。
冬に葉を落とす落葉植物と異なり、常緑植物は一年中つけている。常緑植物の葉の老化が季節でどのように調節されるのか。複数ある老化制御の仕組みのうちどれが働くのかは、十分には解明されていなかった。
研究ではアブラナ科シロイヌナズナの近縁種ではる「ハクサンハタザオ」を用いて4年間の調査を実施した。約3500枚の葉を観察し、生存と成長を記録している。
調査から得られた結果をもとに、グループは葉の老化を促進する二つの主要因を操作した。まず、同じ個体の葉が光をさえぎる現象を調節することで、光環境が悪化した場合にどのように老いが進むのかを調べた。二つ目に、栄養を要求する機関の切除を行った。繁殖器官や新葉への栄養の転流が葉の老化にどのような影響を与えるかを検証している。
研究により、常緑植物が季節に応じて葉の老化を制御することで、資源の獲得と貯蔵を最大化し四季のある温帯の環境に適応していることが明らかになった。湯本特定研究員は「地道な研究ですが、葉の老化という植物の中心課題を扱うことで、長期研究の重要性を示すことができた」と述べている。