量子科学技術研究開発機構(QST)の遠藤浩信主任研究員らは、パーキンソン病とレビー小体型認知症の患者脳のたんぱく質の集まり「αシヌクレイン」の沈着病変を世界で初めて可視化し、その沈着量が運動症状の重症度と関連することを明らかにした。
根本治療薬のない進行性の脳の病気のうちアルツハイマー病に次ぎ、パーキンソン病患者が多いにも関わらず、αシヌクレイン病変を生体脳で可視化する技術は未確立で、患者が亡くなった後で脳の検査により病変を調べない限り、確定診断は行えなかった。
研究ではαシヌクレイン病変に強く結合する別のPET用薬剤「18F-C05-05 」を開発。パーキンソン病やレビー小体型認知症のモデルであるαシヌクレイン病態伝播(でんぱ)マウスとマーモセットで、病変を画像化できることを明らかにした。
次にこの PET 薬剤を臨床で評価した。パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者で病変を検出できることを実証している。また、PET で検出されるαシヌクレイン病変の量と運動症状の進行の間に関連性があることが示されたという。
遠藤主任研究員らは「脳の病理変化に基づくパーキンソン病やレビー小体型認知症の診断や病気の進行度を客観的な評価に利用できることに加えて、治療薬開発時の効果判定にも有用な可能性がある」と説明。「病態解明や治療薬開発を促進することが期待される」としている。