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照葉樹林を約50年研究 「バトンを切らさず、世代を超えて研究したい」 広島大など

コジイの実

広島大学の山田俊弘教授らのチームは、熊本県水俣市の照葉樹林をおよそ半世紀観察した。台風の襲来が、ドングリの実をつける樹木「コジイ」にとって成長のチャンスであることを明らかにしている。これほど長期間にわたり森林を調べた研究はほとんどないという。

研究チームは1966~2015年まで照葉樹林を観察し、最優先種であるコジイ194本の49年間の成長を観察した。それによると、1991年のリンゴ台風により多くの個体が枯れた一方で、生き延びた木はこれまで占有された空間を奪い急速な成長を見せたという。台風は次世代の更新の契機となる可能性もあると分かっている。

調査によれば、そのチャンスをものにできた木は、台風前に林冠に達している程度の個体のみであったという。森林における成長のトップランナーを追いかけ、トップ集団に入り込めていた個体だけにその機会が回ってきたのだ。

チームは今後について「次の50年に向けて観察の歩みを続けていく」と意気込む。「研究のバトンを切らさぬよう注意しながら、世代を超えて研究を続けたい」としている。