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世界初 熱圏宇宙空間のエネルギーカスケード法則を発見 宇宙天気予報に寄与 九大

九州大学のリユウ・フイシン教授らの国際研究グループは、ドイツと欧州宇宙機関(ESA)が運用する衛星を用いて、熱圏にあるエネルギーの流れを示す「エネルギーカスケード」の過程を支配する物理法則を世界で初めて発見した。宇宙天気予報の精度向上や高精度衛星軌道制御に役立つことが期待される。米科学誌のオンライン版で3日に掲載された。

現代社会のインフラを支える放送衛星やGPS衛星が無数に宙で存在する。地表から高度約100〜1000キロを占める熱圏は、衛星の軌道に影響して安全運用を左右する。だが、謎が多く、異なる時間や空間スケールのエネルギー分布や相互作用、エネルギー移動の仕組みなどは解明されていない。

グループはドイツと欧州宇宙機関の人工衛星「チャムプ」と「ゴーチェ」を使って、熱圏領域の80〜1万kmのスケールで運動エネルギーカスケード法則を発見した。

これにより、エネルギーのスケール間変換方向や変換率が明らかになっている。また、この法則は2次元乱流理論に予測されている海面や対流圏など気象領域での法則に類似していることから、大気組成やダイナミクスが違う大気と宇宙領域は普遍的な物理法則に従うことを示唆している。

リユウ教授らは今後について「電離圏プラズマのエネルギーカスケードを解明し、中性粒子、プラズマ相互作用を明らかにした上で、地球モデリングへの応用を試みる予定だ」としている。