慶応義塾大
慶應義塾大学の岡野栄之教授らと三重大学の小久保康昌招へい教授らのグループは、紀伊半島で多発する神経難病「牟婁(むろ)病」の患者のiPS細胞モデルを用いて、たんぱく質「CHCHD2」による遺伝子の発現の低下を明らかにした。
牟婁病は筋萎縮性側索硬化症(ALS)とパーキンソン症状、認知症が同じ患者に出現する紀伊半島で頻発する難病だ。初の患者が確認されてから、300年以上経過してもその原因は解明されていない。
研究グループは5人の患者からiPS細胞を作製。解析したところ、細胞内小器官の機能に重要なたんぱく質であるCHCHD2をもととする遺伝子の発現が少なくなっていることが分かっている。
また、死亡した患者の脊髄を調べると大脳皮質運動やと脊髄前角にある神経組織の保護に関与する「アストロサイト」でCHCHD2が減っていることが認められた。
研究グループは「今後はアストロサイトのみでなく、牟婁病で障害を受ける運動ニューロンや大脳皮質ニューロンなど、様々な細胞種に関しても病態解析や薬剤アプローチを行う」とし「CHCHD2が減少している機序の解明や病気の改善につながる創薬につなげていく」とコメントしている。