霞堤
兵庫県立大学と滋賀県立大学、東京大学の研究グループは29日、治水の取り組みとして注目される「霞堤(かすみてい)」の維持について、そのために支払っても良いと思える金額が減災機能の受益者となる下流の住人と負担者である中流の居住者で変わらないとした。
霞堤は想定を超える大雨により川や水路の水の量が増えた時に、堤防の切れ目から水を逃がし被害を少なくする仕組み。水位の低減や破堤防止、貯留などの防災機能がある。だが、河川が氾濫した後、水がたまる水田にはゴミが堆積するため農作物被害や撤去費用の負担が問題視されている。
研究では1500人にアンケートを実施。霞堤の維持に対する支払意思額は、「負担者である中流の居住者の方が受益者である下流の居住者よりも低い値をとる」という仮説を検証した。その結果、説と異なり霞堤の維持に対する支払意思は、住む土地による影響を受けていなかった。また、生態系保全への関心度が高い回答者ほど、支払意思が大きい傾向がみられると判明している。
グループは「霞堤の維持に対する支持を得るためには、減災機能だけでなく、生態系保全への貢献を普及啓発することが重要である」と指摘している。