大阪大学の渡部直史講師らのチームと理化学研究所、スタートアップ「アルファフュージョン」は同大附属病院で治療抵抗性のある前立腺がんを対象とした新たな治験を6月から開始する。従来の放射線よりもエネルギーの高い「アスタチン」を用いて、難治性前立腺がん治療の治験を行う。
前立腺がんは、国内男性で新規罹患数の最も多いがんだ。国立がん研究センターによれば、2019年に国内で前立腺がんと診断されたのは 9万4748 人となっている。多くの治療が実施されているが、標準治療抵抗性で多発転移を伴う場合は予後が不良だという。
そこで、前立腺がんの細胞表面に発現する膜たんぱく「立腺特異的膜抗原(PSMA)」を標的とした治療法が注目され、海外では既に承認されている。一方、日本ではそれに使う「ルテチウム」が製造できないことに加え、耐性のある患者がいることも分かっている。
そこで、耐性患者にも効き、国内製造可能なアスタチンを使った治験を27年3月まで、15例の患者に対して実施するという。チームは「将来的には日本発の治療方法として、世界中の前立腺がんの患者さんに用いられることが期待される」とコメントしている。