文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
肺がんに対する革新的治療法を開発 細胞周期を調節するたんぱく質を阻害 金沢大

金沢大学の福田康二助教らの研究グループは、細胞分裂に関わるたんぱく質KRAS遺伝子変異を持つ肺がん「KRAS肺がん」に対する細胞周期を調節するWEE1たんぱくを標的とした新しい治療法の開発に成功した。

肺がんは日本で最も死亡率が高いがんであり、KRAS遺伝子変異は日本人肺腺がん患者の約10%に検出される。これはがんの発生や進展を強く促進する遺伝子異常であることが知られている。

研究ではKRAS肺がんで、治療標的の網羅的スクリーニングを実施した。KRAS肺がんの746種の遺伝子を破壊し、432種の薬剤を添加するとWEE1という分子がKRAS肺がん細胞の生存に重要であることが明らかになった。

WEE1はDNAが損傷を受けた時に修復する仕組みに関与しており、がん細胞の増殖によるDNAの傷を回復させる時間を与える。WEE1はCHK2という分子の発現を維持することで、KRAS肺がん細胞の生存過程に重要な役割を果たすことを初めて確認したという。

WEE1を阻害すると、KRAS肺がん細胞はDNAの損傷を回復できず細胞死に至ると考えられた。WEE1阻害薬をKRASの特異型である「KRAS-G12C」の阻害薬と併用することで、KRAS-G12C肺がん細胞の増殖が抑制され相乗的に細胞死の誘導が促進されることも認めている。

福田助教らは「KRAS-G12C阻害薬とWEE1阻害薬併用治療の有効性と安全性を評価する臨床試験につなげていきたい」としている。