寄生虫「トキソプラズマ」は世界人口の約3分の1が抱えているとされる。東北大学の加藤健太郎教授と旭川医科大学の伴戸寛徳准教授の研究グループは、宿主の免疫低下時にこの原虫が再活性化するときに重要な役割を果たすたんぱく質を発見することに成功した。
トキソプラズマは人間が感染すると体内に潜伏感染する。だが、免疫が下がったタイミングで脳炎や肺炎、脈絡網膜炎などの重篤な「トキソプラズマ症」を引き起こす。通常、人が感染するとシスト壁という安定した壁の中に潜んでいるが、免疫が弱くなると再活性化して出てくる。この仕組みは明らかになっていない。
グループは過去の再活性化時に遺伝子発現の上昇が認められたたんぱく質に着目。さまざまな遺伝子組み換えをした寄生虫を作製することで、活性化した時に発現しているたんぱく質の特定と解析を試みた。その結果、たんぱく質「CLP1」が再び力をつけた際に現れており、これはシスト壁周辺に存在していると確認された。
CLP1が果たす役割を調査するため、これを欠損した原虫を生み出して解析した。すると、失った虫は野生型と比べて活性化が抑制されることが判明している。加藤教授らは「再活性化メカニズムの解明が進み、新たな創薬開発につながることで、社会的な課題の解決に貢献できる」と講評している。