東京工業大学の高木泰士教授らのチームは、令和6年能登半島地震における津波増大メカニズムを発表した。海底地形による影響や湾内で波が折り重なった結果、局所的に大きくなったと明らかにしている。
能登半島地震では飯田湾で3メートルを超える波が発生。鵜飼漁港(石川県珠洲市)周辺は津波が海岸から内陸の約500メートルまで達したことが確認されている。一方、より震源に近い能登半島北側の珠洲市川浦町から西の輪島市にかけては、津波による大きな被害はなかった。何らかのメカニズムで津波が大規模化したのでないかと疑われている。
チームの分析によると、地震後、能登半島の北西岸に沿って長く延びた震源断層上で発生した津波は、北西に向かうものと南東に向かう波に分裂。後者は南の富山湾方向に伝播(でんぱ)し、飯田海脚という浅い海域でエネルギーを保ちながら飯田湾に進んだ。同時に、水深900メートル以上の海底谷から同海脚に津波エネルギーが集中したという。
加えて、南北の岬の影響で散乱波が発生し、一部が湾内に入ったことで、二次的な津波が発生。これが第一波に干渉したと推測されている。
高木教授らは「津波による被害は地震の規模や断層の位置といった地震自体に加えて、津波が向かう先の条件に左右されることが浮き彫りになった」と説明。一方で、局所的に小さくなる場所があることも示唆した。だが、「安全な場所であったと考えるのは適切でない」と説明している。