被害状況のドローンによる空撮
東京農工大学の井上真紀教授らと露科学アカデミーシベリア支部で構成された研究チームは、森林害虫「マイマイガ」の食害による被害分布を衛星画像で推定し、その場所に生育している植物の変化を予測。これまで困難であった広域発生の推測可能性を示した。
マイマイガは多様な樹木の葉を食べるため、大発生時の森への被害は深刻であり、その管理は森林の持続させるために重要な課題だ。被害を受けた地点を衛星で検出するモニタリングが、試みられるようになったが、影響は微細であり探すことは困難であった。
研究チームは2017年にマイマイガの大発生をロシアで確認。その時にドローンと衛星で撮影した画像を用いて植生の変化を調査した。それによると、6~8月にかけてシラカバの葉の減少が通常時と比較して大きくなり、マイマイガによる被害と推測された。
この減少量を基準として17~21年の被害分布を作成したところ、17年はドローン画像の被害地点と分布が一致。18年はより広範囲で検出され、19~21年に回復していった。これらの特徴として900~1400メートルの低標高であり、マイマイガの発生地の習性と一致し、それらの場所から大発生を同定できると認められている。
井上教授らは「本研究の成果を基盤として、衛星画像と時系列予測モデルを組み合わせることで、森林害虫の制御に向けた発生のモニタリングおよび予報へとつなげたい」としている。