大阪大学の坂庭嶺人特任助教と英ロンドン大学ユニバーサル・カレッジらの研究グループは、子ども時代の社会経済的指標(SES)が低いがその後に改善した人が最も認知症リスクが低く、健康寿命も長いと発見している。22日付の米科学誌オンライン版に掲載されている。
グループは、要介護認定歴のない65歳以上の日本人約9000人を研究。子ども時代から高齢期までに関して、親の社会的地位や教育歴、職業、所得の変動を調査した。それにより変動を6パターンに分類に成功している。
それによると、高齢期の認知症発症リスクは子ども時代に SES が低いがその後改善した人たちが最も低い結果となった。人生を通してSESが高かった人よりも約20%認知症発症リスクが低いと分かっている。
さらに、65歳以降の健康寿命も長いと確認された。これは、子ども時代に経済的ハンデを抱えていても、乗り越えたときに長寿という観点で恩恵がある可能性があることを示唆するという。
坂庭特任助教は「経済格差などの固定化が進む現代において、個人では改善不可能な子ども時代の健康への影響が逆転可能であることが示せた事は、非常に大きな成果だ」と評価している。