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シロアリ女王の椅子取り合戦 単為生殖メスは巣のコスト 京大

ヤマトシロアリの創設王(黒い個体上)、女王(黒い個体下)、2次女王(腹部の肥大した個体)

京都大学の松浦健二教授らのグループは22日、国内に生息する「ヤマトシロアリ」の女王の座を巡る競争が単為生殖卵の過剰生産を引き起こし、それらが機能不全の羽アリとなることでコロニー全体に大きなコストをもたらしていることを発見した。同日付の英科学誌「英国王立協会紀要」のオンライン版に掲載されている。

シロアリは羽アリが一夫一妻のペアを形成し、これらが最初の王と女王となり巣を立ち上げる。九州から北海道に分布するヤマトシロアリは2次女王を単独で生む(単為生殖)一方で、その他の羽有などは有性生殖で生産する。これは単為生殖による女王継承システムと呼ばれている。

研究では、野外の175コロニーから王と女王のいる場所を採集し、王・女王の構成(創設王・創設女王、2次王・2次女王)、個体数、体重を調べた。ランダムで選んだ28コロニーを解析した結果、サイズが小さいうちは女王の複数の遺伝子型のクローンが存在するが、大きくなるにつれて特定の型のクローンが占有していた。

また、群れで飛ぶ羽アリを採取し分析するとメスの34.5%が単為生殖由来であることが分かった。だが、朽木の中で巣を創設していた個体を集めて解析したところ同生殖によるメスは7.8%のみであり、有性生殖で生まれたメスに比べてほとんどコロニーを作れていないと判明している。

また、単為生殖で生まれたアリはサイズが小さく、生存率が低いと確認された。野外で捕まえた女王にはこの生殖法に由来する個体が含まれていなかったことから女王単体で生んだ個体は機能不全であると考察される。

研究グループは「女王の座を巡って激しいクローン間競争が存在し、2次女王の座を得られない単為生殖由来メスは溢れ出て羽アリになっていることが分かった」とし、さらに「このメスは羽アリとしては機能できておらず無駄なコストになっていた」と説明している。