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ベニガオザル、4頭が死体と交尾 野生生物で初確認 「死の概念がない可能性」 京大

死んだメスと交尾するベニガオザル=豊田有・特任研究員撮影、タイ王国

京都大学の豊田有特任研究員と松田一希同教授らのグループは、野生の霊長類としては初めてとなる死亡個体との交尾行動をタイ王国に生息するベニガオザルで観察した。動物の死生観を理解する上で貴重なデータとなりそうだ。

ベニガオザルは赤い顔が特徴的でアジア地域に生息している。森林伐採などの影響で絶滅の危機にあり調査は難しく、これまで研究が行われてこなかった謎の多いサルだ。

研究員らは死体が発見された際には、可能な限り他個体の反応を記録して情報の蓄積を行った。昨年1月に野生ベニガオザルの大人のメスの死体を発見。観察をしたところ、大人のオスが死体と交尾する場面に遭遇した。その後も、3頭のオスが同様の行動をしていたという。

グループによれば、「交尾が観察されたオスたちは交尾機会の獲得が難しい社会的順位の低いオスたちであった」と説明。「メスが単に無抵抗で横たわっているという状況がオスの交尾行動を誘発した可能性が考えられる」と推測している。また、腐敗が進んだ個体に対しても行っていたことから死の概念がないとも考察した。

豊田特任研究員は「目の前の行動に対して、驚愕という感情は死の概念をもつ人間だからこそ喚起された感情であることに考え至った際には、動物を観察する研究者の生物学的制約を突きつけられた」とコメントしている。