金沢大学の研究グループは、禁煙補助薬のバレニクリンによって認知記憶力がアップする脳内メカニズムを明らかにした。
高齢社会白書によると、日本国内での65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人,2025 年には約 675 万人に及ぶと予測されている。しかし、十分な効果を示す治療薬があるとはいえず、また、新規治療薬は高価格から医療費を圧迫することが懸念されている。したがって、既存の薬物から認知症治療につながる薬を見つけることは患者だけでなく、社会的にも重要と考えられる。
今回、研究グループは、認知記憶機能に関与するとされている内側前頭前野とタバコの成分でもあるニコチンが結合する脳内ニコチン性アセチルコリン受容体に着目。禁煙補助薬として認可されているバレニクリンの作用を調べたところ、マウスの物体認知記憶力を顕著に増大させることを発見した。
これらの知見は将来、低コストの認知症治療薬の開発につながることが期待される。
この研究成果は、大学院医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士後期課程 2 年の江崎博仁さん、泉翔馬さん、医薬保健学域薬学類6年の桂あやのさんと、医薬保健研究域薬学系の出山諭司准教授、金田勝幸教授らによる解明された。
研究成果は国際学術雑誌『Neuropharmacology』のオンライン版に掲載された。