東京大学の平尾聡秀講師と千葉大学の梅木清教授らの研究グループは、落ち葉などが土に分解される落葉分解のホームフィールド・アドヴァンテージ(HFA)現象の生態学的メカニズムを明らかにした。森林の土壌炭素管理への応用にもつながりそうだ。
HFA現象はその植物が生育する場所は他の地点よりも効率的に分解される事象だ。HFA現象がその場所に特有な土壌微生物の活動によって引き起こされるという仮説は広く受け入れられている一方で、これを支持する証拠はなく、現象と微生物の関係性を解明するための研究を行う必要があった。
研究ではコメツガが優占する高標高地とイヌブナが生態的に優勢である低標高地を対象に、土壌と葉を相互に移植する野外実験を実施した。その結果、コメツガの落葉は高標高地で、イヌブナの落葉は低標高地で分解率が高くなることが認められた。それぞれが存在する場所で効率的に解体される仕組みがあると分かっている。
また、解析の結果、それぞれの土地に特有の真菌と細菌そうが特定され、これらの微生物の優占度が高いほど早く分解されることが判明した。この結果は、仮説を支持し、森林と土の関係がHFA現象の重要な要素であることを示している。
研究グループは「さらに研究を進め、落葉と土壌微生物間の関係が落葉分解の進行を通じて土壌炭素蓄積に果たす役割を明らかにしたい」と力を込めている。