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エルニーニョ発達の速さ、暖冬・寒冬を左右 異常天候予測の精度向上に期待 九大

九州大学の塩崎公大学術研究員や時長宏樹教授らの研究グループは、夏から冬にかけてのエルニーニョ現象の発達スピードが、暖冬傾向になるのか寒冬傾向になるのかを決定していることを発見した。エルニーニョとインド洋変動の連動性をより良く再現することで、3カ月予報の精度向上が期待されるとしている。

エルニーニョは赤道東部の海面水温が上がる現象のこと。豪雨による洪水や干ばつなどの異常気象につながりやすい。これは地球規模で大気の流れを変えて起こる現象である。だが、日本ではエルニーニョ発生年に暖冬になることも寒冬になることもあり、両者を分ける要因は未解明であった。

研究では過去61年間100通りの天候を再現したシミュレーションを実施。エルニーニョが夏の早い時期から発生すれば、熱帯インド洋の海面水温を上昇させる。フィリピン東方沖の降水活動抑制につながり、日本の南東沖で高気圧を形成し、偏西風を北側へ蛇行させるという。

一方で、発生のタイミングが遅いと、熱帯インド洋の水温上昇は大きくならず、それ以降の変化も現れない。そのため、北太平洋上の低気圧が日本付近にまで張り出すことによって西高東低の冬型の気圧配置と寒気が強化され、寒い冬になる。

研究グループは「インド洋の水温上昇が現在よりも顕著になった際、地球温暖化と熱帯からの遠隔影響の相乗効果が将来の日本の暖冬をどのように変化させるかについてはさらなる研究が必要だ」と指摘している。