大阪公立大学の上杉徳照准教授らの研究グループは、アルミニウムやチタンなど12種類の合金元素の相互作用を調べた。その結果、チタンが特定の場所に配置するときに窒素や炭素と結びつき鉄が硬化することが分かった。鉄鋼の強化と耐久性向上や優れた材料開発の貢献に期待できそうだ。
研究では、浸炭と窒化に焦点を当てた。そして、元素間で引き合うか反発するかを示す「相互作用エネルギー」について第一原理計算(※)を用いて定量的に評価。炭素や窒素の原子と、アルミニウムやチタンなどの原子との間で形成される位置関係や組み合わせにおける異なる2つの原子が凝縮した二原子クラスターの相互作用を調べた。
元素の組み合わせは、炭素と窒素それぞれに12種類の合金元素、さらに体心立方構造の位置関係において最も近いものから5番目のものまで、計120パターンについて計算した。
その結果、120 パターンの中で特定の位置関係にある限られた元素のみ、炭素や窒素と強く結合することが判明したという。さらに解析したところ、鉄原子より大きい元素でないと炭素や窒素と結合しないことが分かった。
また、三原子クラスター間の相互作用エネルギーについても調査。原子の配列の違いによりエネルギー状態が大きく変わること、鉄を硬化させるナノクラスターを形成する元素の組み合わせでなければ、三原子クラスターは結合しないことを突き止めた。
研究グループは今後について、「さらに多くの元素の組み合わせや異なる環境条件下での相互作用を調査することに加え、産業界との連携を進めることで実際の製造プロセスにおける鉄鋼材料の性能向上に貢献する」と評価している。
※第一原理計算
原子レベルでのエネルギーの変化を精密に予測し、相互作用エネルギーを算出する。