文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
6次元の揺らぎ、準結晶の比熱上昇に影響 材料開発を加速 東大×JAEA

東京大学の永井佑紀准教授と物質材料研究機構の岩﨑祐昂研究員らのグループは、準結晶である 「Al-Pd-Ru(アルミニウム-パラジウム-ルテニウム)系物質群」が、高温域で通常ではあり得ないほど比熱が大きくなることを発見した。その起源が、準結晶の6次元空間での揺らぎによるアルミニウム原子の拡散にあることを突き止めている。

準結晶は原子構造が金属や氷などの結晶のような周期性を持たず、一方でガラスなど「アモルファス」のような乱れた構造ではない高い秩序構造を持ち、第3の固体と呼ばれる。

研究ではAl-Pd-Ru準結晶における量子力学的効果も取り入れた原子間の相互作用を再現する機械学習モデルを構築し、実験とシミュレーションの両方を行って直接比較することで6次元空間の性質を捉えることを試みた。

その結果、温度の上昇に伴い、準結晶内のアルミニウム原子が原子構造の内部を拡散的に移動を開始し、それが比熱の異常上昇として観測されていることが分かった。そして、この移動経路が6次元空間の原子が揺らぐことで得られる経路と完全に一致していた。つまり、6次元空間の原子の揺らぎが実際の3次元の世界で観測されたという。

研究グループは「熱エネルギーと電気エネルギーを相互変換する熱電材料、イオン伝導を利用する電池材料など、固体の様々な特性を利用した材料の開発が加速し、エネルギーの有効活用などにつながることが期待される」としている。