産業技術総合研究所の⽻部浩副研究部⾨⻑らの研究チームは、菌の働きで発酵処理する「乾式メタン発酵」国内最大規模の施設を⽤いて、廃棄物から発生するバイオガスの研究を実施した。ガスを高精度に予測する手法を開発しており、高効率な施設運営の実現につながる可能性がある。
可燃性廃棄物の多くは焼却処理されるが、メタン発酵によりメタンガスが得られるため、乾式メタン発酵と組み合わせてバイオガスと焼却熱を回収する「コンバインド⽅式」の開発も注⽬されている。だが、発酵を行う装置内での分解やガス発生に関わる微生物について理解されておらず、ガス発生量を正確に予測する手法もなかった。
研究グループは、乾式メタン発酵の試験機を⽤いて、紙ごみと⼀般可燃ごみを投⼊してバイオガスを発⽣させ、反応途中や終了後の各種汚泥を採取して菌そう解析を⾏った。また、稼働中の発酵施設からも汚泥を取って検討している。
その結果、廃棄物分解に関与する細菌群として「クロストリジウム」に分類される菌が優占種となっており、その存在量は廃棄物や反応期間で変化しないことが確認された。メタンガス発生に関わる菌の種類も調べたところ、「メタノクレウス」に属するものの数が多いと分かっている。
廃棄物とガス量の関係性を可視化すると、投入量がゼロの日もガス発生量が全くないとは限らないといった特徴があると認められた。そこで、2019年の廃棄物量によりガス発生量を予測するモデルを作成した。平均気温とモデルの誤差の相関があると分かっている。気候を考慮したモデルを作ったところ、予測精度を向上させることに成功したという。
グループは「バイオガス予測モデルを作成した本研究のシンプルな⼿法が、他の⺠間や⾃治体の管理する乾式メタン発酵施設にも適⽤できないか」と考察。「現場の実情に合ったモデル調整を⾏うことで、⽬的のバイオガス量が得られる管理ができれば、乾式メタン発酵の普及につながる」と期待を寄せている。