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生命の発生に重要なヒント 火星の有機物が一酸化炭素から作成 東京工業大×コペンハーゲン大

初期火星のイメージ=Lucy Kwok氏作成

東京工業大学の上野雄一郎教授とコペンハーゲン大学の研究チームは、火星の堆積物中に含まれる有機物が大気中の一酸化炭素(CO)から生成したものである証拠を示した。地球に生命が誕生した理由にもつながる大切な発見だという。

火星の有機物は異常な炭素の安定同位体比(※)であると知られていたが、その原因は不明であった。研究チームは二酸化炭素(CO₂)の紫外線による分裂で作られるCOが、この同位体異常をもつことを室内実験と理論計算によって明らかにしている。

また、このCOは初期火星大気中では有機物となり堆積することも分かった。こうした実験結果を元にモデル計算を行ったところ、驚くべきことに最大で大気にあるCO₂の20%が有機物として地表に積もった可能性があると判明したという。

研究グループは「推定が正しければ、火星堆積物中には有機物が想定外の量で存在している可能性があり、今後の火星探査によって大量に見つかるかもしれない」とし「生命がどのように発生したのかという問いに対して、重要なヒントが得られた」と評している。

上野雄一郎・東京工業大学教授

さらに、上野教授は今後について、なぜ生命が地球に誕生した原因を今後展開していくと説明。「初期の地球とか火星の環境が分かると、生命がどのように誕生したのかが具体的に分かってくれるかなと考えているので、そのための重要な一歩になった」と語った。

安定同位体比

ある元素のうち、質量数の異なるものを同位体と呼び、放射壊変せずに安定に存在するものが安定同位体である。炭素の安定同位体には質量数 12 の¹²C と質量数13の¹³Cの2種類があり、その比率¹³C/¹²Cを安定同位体比と呼ぶ。