東北大学と京都大学、福島大学の研究チームは、屋久島のミニチュア植物はヤクシカから逃れるために小さく進化したと解明した。サイズの小型化に関わる遺伝子の知見は園芸分野における小型品種の作出などへの応用も期待されている。
屋久島には80種近くのミニチュア植物が存在している。多くは固有種だ。その理由に低温や土壌貧栄養、日照不足など説が唱えられてきたが、科学的に検証されてこなかった。研究グループは「ミニチュア植物はヤクシカの採食圧を回避するために進化した」という仮説を立てて、検証した。
ヤクシカの好む植物とそうでない植物を選定してサイズを測定すると、エサとなる種類は島外の10分の1の大きさであった一方で、好まれないものは他地域と同サイズであった。他の条件を検討してもヤクシカの嗜好性が大きさに最も関連していると考えられた。
大規模な小型化を起こした要因として、ヤクシカの個体密度の高さが考えられた。天敵となる動物が分布しておらず、本州と比較して10倍以上大きな密度で生息しているという。敵がおらず他の土地からも隔離された自然環境が、世界的に類をみないスケールで植物を小さくしたと結論付けた。
研究グループは「研究成果は、屋久島における生物多様性の形成過程の一端と、またその生態系の新たなる一面を明らかにした」とコメントしている。