気候が動物、伝承を制約
国立遺伝学研究所の柴﨑祥太特任研究員、横浜国立大学の中臺亮介講師、英オックスフォード大学の中分遥講師のチームは、400以上の動物にまつわる民間伝承を解析した。世界の動物の分布や気候と比較して、実際の生息地に対応する言い伝えが大半だということを明らかにした。
研究では伝承内でずるや悪戯(いたずら)をするトリックスター動物が出現するお話を400件以上抽出。登場する場所と種類を調べ、アナグマやアリクイ、ウサギなど15種がさまざまな地域で出てきていた。それを基に実際に動物が生息している確率を求めた。
その結果、8割以上がトリックスターの生息地であると明らかになった。民間伝承が記録される場所でその生物も確認されたことから、生き物の存在が伝承で伝えられるキャラクターを制約していると推測された。また、気候が生息地を縛るため、間接的に民話が伝えられる場所にも関わっていると考えられている。
チームは「人間の文化と自然は密接に関わっているため、自然破壊によって人間の文化も失われていくのではないかと危惧される」と説明。「人間文化と自然保護の関係を明らかにするとともに、文化を保全することが自然環境の保護にもつながるのではないかといった仮説を研究していきたい」としている。