イワタイゲキ
京都⼤学の髙⼭浩司准教授と福島⼤学の⿊沢⾼秀教授らのグループは、海岸植物の「イワタイゲキ」の分布形成過程を解明した。鹿児島県のトカラ海峡が、植物にとっても分布域を妨げる要因となることを示した貴重な研究だという。10日付の米科学誌に掲載されている。
イワタイゲキは日本や韓国、台湾に生息する植物。日本列島では南方に多く、本州ではあまり見かけない生物だ。その分布域を網羅するようにDNA資料を採集すると、トカラ海峡を境に南北の集団が分かれていることが確認された。
研究によると、北琉球以北、中琉球、南琉球以南の集団がそれぞれ異なる遺伝組成を持っていた。中琉球は南北のイワタイゲキが混合することで生まれたと判明している。また、同種の祖先は日本の河川などで生息する「ノウルシ」と共通であると推測された。
イワタイゲキは海岸に⽣育し、種⼦が海⽔に浮遊することから、海流で生息圏を拡げてきた植物だ。一方、空間的な遺伝構造からはトカラ海峡が分布拡⼤の障害となっていると分かった。これまでも生物の分布境界線としてこの海峡が提唱されてきたが、海流散布植物にとっても移住を妨げる原因となっていると確認された。
髙⼭准教授らは「同じような分布をする海岸植物との⽐較を通じて、海岸植物にとっての共通の地理的障壁や個々の種が持つ散布能⼒の違いがその分布変遷過程に与える影響について検証していきたい」と意気込んでいる。