岡山大学と筑波大学、京都大学のグループはナノ材料表面を粒子の凝集を防ぐ「ポリグリセロール」でコーティングすることで、モデル生物である線虫「カエノラブディティス・エレガンス(C. エレガンス)」の体内へのナノ材料蓄積を制御することに成功した。素材の環境影響をこれまでよりも正確に確認することが可能になるという。
近年、ナノ材料は土壌改良や水質浄化に有用なものとして研究されている。一方で、土や海洋、河川などに流出する可能性があり、環境および生態系への影響が懸念されている。ナノ材料の表面がさまざまなところに影響を及ぼす中、生体内への取り込む量を評価することは材料表面の不均一性から困難であった。
研究では、ナノ材料外面を均一にして親水化する方法として、ポリグリセロール修飾に着目した。C. エレガンスに適用するため、代表的ナノ材料である「超常磁性酸化鉄ナノ粒子」を加工。線虫の寿命や生殖能力に基づく毒性評価が可能な実験モデル系を確立した。
その結果、ナノ粒子をポリグリセロールで被覆した場合は線虫のナノ粒子蓄積量が減少した。粒子表面が負に帯電した場合は線虫体内への蓄積が抑制され、粒子表面を正にした場合は体内に蓄積することが分かったという。また、ナノ粒子が体内にたまった場合は、生きられる時間や生殖能に影響が生じることが明らかとなっている。
研究グループは「ポリグリセロールによる表面修飾はさまざまなナノ材料にも適用可能なため、ナノ材料の環境負荷を下げることが期待される」とコメント。「薬などの担持媒体としても活用されるため、効率的に生体内に蓄積させるための技術としても利用可能となる」としている。