文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
200年ぶりに解明 ホヤの心臓の運動が反転するのはなぜなのか? 人体理解にも貢献 広島大×阪大

(左)カタユウレイボヤ(右)ホヤの心臓

広島大学の藤掛雄馬大学院生と大阪大学の福田啓太大学院生(当時)は、広島大と近畿大学教授の協力を得て、ホヤの一種「カタユウレイボヤ」の心臓管を使って拍動の反転の分析手法を確立した。さらに200年以上謎であったこの現象が、リズムの変調にあることを明らかにしている。

ホヤは海底の岩などにへばりついて生きている無脊椎動物だ。ホヤと人はほとんど同じ仕組みの心臓を持つことが知られているが、ホヤのものは定期的に拍動が反転し、血流方向も逆となる。これは200年以上前に発見された事象だが、未解明のまま残されていた。

藤掛大学院生はカタユウレイボヤの心臓管の一部を切り出して、長時間拍動パターンを分析する手法を確立した。

さまざまな心臓片に適用して、「心臓管の両末端の細胞群にのみ自律的で持続的な拍動リズムを刻むペースメーカー能が備わっていること」「より高い周波数のリズムを発する側の ペースメーカーが拍動の起点になる」「それら末端のペースメーカーが刻む拍動リズムが互いに異なる周期で自律的に変調すること」を突き止めた。

また、福田大学院生はペースメーカーが存在する「ホヤ心臓モデル」をコンピューター状に構築。モデル上でリズムの変調が拍動方向の反転の必要十分条件になることを証明している。

人間の体でもリズムの変化が見られることから、藤掛大学院生らは「ホヤの心臓が備える奇妙な性質の解明に大きな前進をもたらしたばかりでなく、我々の体を支配するリズムの生成原理に重要な理解を与えるもの」と講評している。