文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
新たにアラスカの山岳氷河で高濃度メタン 大気中で最大6倍 氷河からの解放が原因 JAMSTECなど

キャスナー氷河周辺の様子

海洋研究開発機構(JAMSTEC)の紺屋恵子研究員らと北海道大学、米アラスカ大学などのグループは、アラスカ州の山岳氷河域で高濃度のメタンが放出されていることを確認した。山岳氷河を新たな放出源として考慮する必要性を明らかにし、量の把握の精緻化につながる成果だという。9日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されている。

メタンは二酸化炭素(CO₂)に次いで地球温暖化への影響が大きい温室効果ガスで、大気中の濃度は毎年上昇している。先行研究で報告されたカナダやチベットの山岳氷河以外でも、メタン放出が確認できるかを探るためアラスカ山脈の複数地点で観測した。

研究では、水面大気中メタン濃度、流出水中溶存メタン濃度、水面メタンフラックス(放出量)を調査。2021年と22年に20キロメートル程度のグルカナ、キャンウェル、キャスナーと40キロメートルのマタヌスカ氷河を対象に実施した。

携帯ガスアナライザーによる現地測定と、採取した流出水の溶存ガス分析を行った結果から、4地点のうち3カ所でメタン濃度が一般大気より高いと発見。高濃度のメタンが測定されないグルカナは1.9ppmであったが、キャスナーでは6ppmに達していた。

水面からの放出量が最も多かったキャスナーは一般河川と比較して、6倍に上った。また、4氷河の流水中の濃度を調べると、高濃度のメタンが含まれた。メタンが溶けた氷河流出水が氷河から解放され、大気中に放出されていると考えられている。

紺屋研究員らは「アラスカ山岳氷河もメタン放出源の一つということが判明した」と報告。「引き続き分析を行い、山岳氷河からのメタン放出に関して、放出量の変化や発生源を解明し、今後の放出量予測およびその精緻化につなげていく」としている。