慶應義塾大学
慶應義塾大学の鳴海覚志教授らのグループは東北大学と国立成育医療研究センターと共同で、知的障害などを起こす「日本人先天性甲状腺機能低下症」の患者を研究し、15番染色体の非コードゲノム異常が発症に関わることを特定した。9割が原因不明であったが、75%がこれによるものであると分かっている。
日本人先天性甲状腺機能低下症は甲状腺の形や機能に生まれつきの異常があり、甲状腺ホルモンの合成量が不足するために低身長や知的障害などが起こる先天性疾患。2000~3000人に1人が発症する疾患として知られる。
研究グループは989人の患者を対象に研究を実施。214人は標準的な遺伝子解析で診断を確定したが、約80%は未診断であった。中でも、親子例100人のうち確定できたのは6%のみであったという。
グループは13人の原因不明の甲状腺機能低下症について、ゲノム異常が染色体上のどの位置に存在するかを調査。ゲノム異常が存在する候補領域を15番染色体の300万塩基対まで絞り込んだ。続いて全ゲノム解析を行い10家系のうち8家系に共通する非コードゲノム異常を特定している。
この以上は患者全体の1割強で観察され、家族歴のある患者に限れば、その割合は約4割に増えて、親子例では7割を超えている。研究を通じて、特に家族歴のある甲状腺機能低下症においては15番染色体非コードゲノム異常が主因であることを突き止めた。
鳴海教授らは今後について「この非コードゲノム異常がどのような分子メカニズムで甲状腺の形状や働きに影響を与えるのか、患者が長期的にどのような臨床経過をたどるか、などの研究を計画している」とした。