実験で用いられた線虫類
理化学研究所の長田裕之ユニットリーダーらの研究グループは、新しい作用メカニズムのある駆虫薬の候補となる化合物を新たに発見した。より効果的な薬品の開発につながる可能性があるという。英科学雑誌「ネイチャーコミュニケーションズ」のオンライン版に8日付で掲載されている。
土壌伝染性ぜん虫(STH)は、世界に 10 億人以上の感染者がいる寄生虫だ。有効な薬は少なく、新しい製品の開発が急務となっている。宿主の動物に害を与えず、STHを駆除できる化合物を見いだせるかが重要なポイントだという。
研究グループは宿主動物にはない「ロドキノン経路」を狙うことが最適と考察。モデル生物である線虫に青酸カリを投与すると活動を止めるが、ロドキノン経路によって生存してしまうからだ。経路阻害物質があれば、線虫が青酸カリで死ぬことを確認している。
また、効果が見込まれる理研ライブラリーの4化合物を使って解析したところ、マウスに寄生するSTHの40%を殺すことに成功したている。
長田リーダーらは「得られた新しい作用メカニズムを持つ駆虫薬候補からさらに強い活性を有する化合物への誘導体展開を行うことで、近い将来、駆虫薬として実用化できる」と講評している。