マルボシヒラタヤドリバエ
九州大学の駒形森さんと小川浩太助教 、舘卓司准教授らのグループは、カメムシに寄生するヤドリバエの幼虫がフンを利用し、既知のメカニズムとは異なる方法で空気を引き込む構造物「呼吸漏斗(ファネル)」を形成していると突き止めた。生態を解明することは、ヤドリバエを用いた農業害虫の管理法確立につながると期待されている。
ヤドリバエはハエの体内に宿る虫で、その幼虫はファネルを作って外気を取り入れている。ホストの免疫機構を用いて作成するのが一般的であるが、カメムシのヤドリバエは違った手法で形成している可能性が高いと考えられていた。
研究グループはマルボシヒラタヤドリバエの幼虫を寄生させたチャバネアオカメムシを解剖してファネルの成立過程を観察するとともに、レーザー顕微鏡を使って外から観察することで完成するまでの経過を観察した。
その結果、幼虫はカメムシの体内で1本につながったフンを排泄(はいせつ)し、体に巻き付けていくことでファネルを作り出すことが分かっている。空気を巡らせる器官と幼虫の尾にある呼吸に使用する部分をつなぐことで呼吸用具の役割を果たしていると分かっている。
また、複数のカメムシに寄生するヤドリバエのファネルを比較するとフン製シュノーケルがある程度広く見られることも判明している。
研究グループは「ヤドリバエとは独立に寄生性およびファネルを獲得したと思われるこれらのグループも含めて包括的な研究が行われれば、ハエ類が寄生性を獲得するに至った進化的な経緯をより詳しく考察できる」とコメントしている。