カナダの針広混交林=撮影:久野真純助教
京都大学(現広島大学)の久野真純助教らのグループは、気候変動が生態系機能に負の影響を与える一方で、樹木の多様性がこれを緩和することを解明した。気候の変化に直面した森林生態系の持続可能性を高める研究に貢献するとしている。
近年の実験から、植物の多様性は温暖化など気候ストレスに対する抵抗力があることが分かってきた。だが、長期の気候変動を対象とした報告はない。今回、研究グループは1958年~2015年に乾燥気候帯であるカナダ西部でモニタリングされた、約30万個体の樹木のデータを使って解析した。
それによると、二酸化炭素の濃度上昇が森林成長にもたらす有益性があるにもかかわらず、乾燥林の成長量は水分不足のストレスにより57年間の観測期間中に減少し続けていた。一方で、樹木が多様な森林では単一種からなる森と比較して、気候変動下の生産性が13%高かった。
研究グループは「樹木形質の多様性を高めることで乾燥林の気候変動に対する長期的な抵抗力を高められる可能性が示唆された」と評価。「生態系の耐久性と持続可能性を高める解決策の実施に資する」としている。