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生物多様性は土地利用より気候変動に影響 150年間を4シナリオで分析 立命館大など

立命館大学や森林研究・整備機構森林総合研究所、京都大学などの研究グループは、生物多様性と生態系のシミュレーションモデルを使ってこれら今後を4つのシナリオから分析した。生物多様性が気候変動に影響されることなどが判明している。一方、モデル推計の慎重な評価も訴えた。

研究グループは1900~2050年までのシミュレーションを用いて、生物多様性と生体系サービスに関する解析を実施。気候変動と土地利用が抑制された「持続可能な発展シナリオ」、気候変動と強い土地利用変化を想定した「地域間競争シナリオ」、気候変動と中程度の土地利用を推測した「化石燃料志向の発展シナリオ」の4シナリオで検討している。

それによると、持続可能なシナリオでは20世紀よりも緩やかに生物多様性が低下するが、地域間競争シナリオと化石燃料志向のシナリオでは同じスピードで減少した。生物多様性は、土地利用よりも気候変動に強く起因することが分かっている。

生態系サービス(※)について、20世紀中、供給サービスは増加し、調整サービスは小さくなった。この傾向は、今後数十年間続くが、持続可能なシナリオでは緩やかな人口増加と健康的食事への移行による食材や木材の需要が低下した。

一方、地域間競争と化石燃料シナリオでは食料や木材の需要増が土地利用変化をもたらし、調整サービスを減少させていた。

研究グループは「モデル比較により21世紀半ばまで、気候変動の進み具体が土地利用変化よりも、陸域生物多様性の損失に大きく寄与することが示された」とコメント。一方で、モデル推計には大きなばらつきがあるため、慎重に評価する必要性を伝えている。

※生態系サービス

食料、木材、燃料、水、薬などの「供給サービス」と大気質・水質の浄化、気候調整、災害の緩和の「調整サービス」、自然景観の保全、レクリエーション、分化芸術の「文化的サービス」。これら3つの基盤となる植物の光合成、土壌形成、栄養循環などの「基盤サービス」の4つに分類されるもの。