早稲田大学
早稲田大学の小柳津研一教授らと独ミュンヘン工科大学の研究グループは、硫黄を含む水素結合を組み込んだ高分子を設計し、達成が難しいとされる1.8以上の超高屈折率と発光素子に適用できる透明性を両立した。リサイクル可能な有機EL実現に貢献しそうだ。
高屈折率ポリマー (HRIP) は発光デバイスの輝度や効率の向上に欠かせない材料だ。デバイスのコーティング剤として使うことで、多くの光を取り出せるようになる。HPIRの開発で屈折率と可視光透明性はトレードオフであり、1.8以上の屈折率と十分な透明性を両立することは困難であった。
研究グループは、HRIPが固体状態で生じる高分子鎖の隙間が屈折率低下の要因であると考えた。空間を減らし、透明性を保てる範囲で硫黄含量を大きくし、隙間の割合を減らした分子設計を施すことで、HRIPの屈折率と透明性を同時に向上させることに成功した。
研究では水素結合性を示す化学構造「ポリ(チオウレア)」を開発。トレードオフの関係を解消し、穏和な条件での分解性を付与した初めての例だという。これまでよりも低負荷でリサイクル可能な有機ELの実現が期待できるとしている。
研究グループは「ポリ(チオウレア)の化学構造や硫黄含量などを精密に制御することで、使用時はさらに優れた屈折率と安定性を両立し、使用後のリサイクル効率の高いHRIPの実現につなげたい」と意気込んでいる。