理化学研究所の鈴木匡主任研究員と武田薬品工業の共同チームは、遺伝性希少疾患である「NGLY1欠損症」を模倣したモデルマウスが示すけいれん症状を、愛情ホルモンとして知られる「オキシトシン」が抑制することを明らかにした。科学雑誌「コミュニケーションズバイオロジー」の22日付のオンライン版に掲載されている。
NGLY1 欠損症患者は発育不全、四肢の筋力低下、不随意運動、てんかん発作などの症状を示す。だが、病態発現のメカニズムは解明されておらず、有効な治療法も見つかっていない。両者はNGLY1欠損症のモデルマウスを用いてけいれん症状の仕組みを調べた。
研究チームはモデルマウスがけいれんを起こすか調べたところ、1日に30~40回の頻度で示していると確認した。その原因を解明するため、脳内や脊髄を測定し、正常なマウスと比較した。その結果、視床下部においてオキシトシンとペプチドの両方が低下していると分かった。
モデルマウスにオキシトシンペプチドの経鼻投与を行い、血中や脳内のオキシトシン濃度の上昇を認めた。すると、モデルマウスのけいれん症状は抑えられたという。「今まで報告されていなかったNGLY1 とオキシトシンの関連や、オキシトシンの新たな薬効が示唆された」と説明している。