物質・材料研究機構(NIMS)と北海道大学、明治薬科大学の研究チームは、静電荷を内部に保持できるゲル材料「ゲル–エレクトレット」を開発した。このゲルを組み込んだ自由変形可能な電極は、人体の運動などで生じる振動をシグナルとして出力するセンサー機能を示すことから、ウェアラブルヘルスケアなどへの応用が期待されている。
静電荷を安定化するπ共役色素部位と柔軟な分岐炭化水素(アルキル)鎖からなる難揮発性の常温液体「アルキル–π液体」は、流動性のある液体エレクトレットとしてNIMSが先導して開発を進めている新規材料だ。加工性に優れる反面、流体であるため液漏れや染み出しなど電極作製時の固定化や封止に課題があった。
研究チームは、アルキル–π液体に微量の低分子ゲル化剤を加えることで貯蔵弾性率を4000万倍増加させ、固定化や封止が容易であるゲル「アルキル–πゲル」の創成に成功した。
このゲルを帯電処理して得られたゲル–エレクトレットは、ゲル化によって内部に静電荷を閉じ込める効果が向上したために、液体と比較して 24%の帯電量の向上を達成している。また、ゲル–エレクトレットを組み込んだ柔軟な電極素子は、17ヘルツの低周波振動に対し出力600ミリボルト(液体素子より83%増大)の振動センサー機能を示した。
研究チームは「今後、帯電特性とゲル強度をさらに高めて素子性能を向上させることで、微弱な振動や様々な歪み変形に追従可能なウェアラブルセンサーとしての実用化を目指す」と説明している。