理化学研究所の堂前直ユニットリーダーらと東京大学の共同研究グループは、抗てんかん薬「レベチラセタム」などが作用する機構を、その標的である膜タンパク質の立体構造に基づいて解明した。18日付の「ネイチャーコミュニケーションズ」のオンライン版で掲載されている。
てんかんは人口の1%程度が発症する疾患で、現在100万人以上の患者がいるとされる。抗てんかん薬のレベチラセタムとブリバラセタムは神経細胞に存在するたんぱく質「SV2A」に作用し、神経毒であるボツリヌス毒素の受容体として機能する。
解析によれば、レベチラセタムは SV2Aの空洞の底部に結合しており、SV2A が膜輸送体として働く時の基質の結合部位を奪っていると考えられた。
先行研究ではレベチラセタムとの結合に重要な複数のアミノ酸残基が、SV2Aの変異体実験により同定されている。これらのアミノ酸残基のほとんどは、今回明らかになったレベチラセタム結合部位の近傍に位置しており、これまでの研究結果とよく一致した。
研究グループは「今回の成果は、SV2Aを標的とする新たな抗てんかん薬やPET プローブの効率的・論理的な開発に向けた重要な知見となる」とし「ボツリヌス毒素と SV2A との結合様式が明らかとなったことにより、ボツリヌス毒素の薬剤応用にも貢献する」とコメントしている。