東京大学の伊藤真利子特任講師や立教大学の大西立顕教授らの研究グループは、東証株式市場における取引時系列から、ニュースなどの外部情報が起こす効果と取引が取引を呼ぶ内的な影響の強さを推定する新たなアルゴリズムを開発した。18日付の国際誌「プロスワン」で掲載されている。
研究グループは、外的・内的要因の時間的な連続性を制約式として明示的に導入することによって、期待値計算と最適化を行うステップの繰り返し計算からなるEMアルゴリズムを提案した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により不安定化した2020年3月の東証市場データを用いた実分析では、27銘柄にわたる千を超える大量の点過程時系列のデータを扱い、外的・内的要因の時間変化を銘柄ごとに推定することに成功している。
分析によると、同年の日本銀行による金融緩和政策の発表などの影響が明らかになった。これらのイベント中や発表後、取引抑制や頻度の増加が観察され、同時に内生的要因による「取引が取引を呼ぶ」効果の増強も確認されている。
さらに、時価総額が高い企業銘柄はニュースへの反応が大きい一方で、内側の要因による促進効果は弱いことが明らかになっている。
研究グループは「詳細な研究用データと高度な数理解析手法に基づく分析により、市場の動きをより精密に把握し、市場の安定性・不安定性のメカニズム解明に貢献する」とし「この研究は、市場の変動をより詳細に捉え、将来的な不安定化の予兆を検出する手法の開発につながる」とコメントしている。