京都大学の尾野亘同教授らの研究グループは、エコノミークラス症候群の新しい薬剤「リバーロキサン」が授乳婦に安全に投与できることを示した。この薬剤が治療の選択肢となる意義の大きな結果であるという。
エコノミークラス症候群は長時間同じ姿勢でいることにより、血液が肺の血管に詰まり胸の痛みなどを生じさせる。抗凝固療法とよばれる治療が行われるが、乳児への薬剤曝露が心配されていた。
グループは2人の患者にリバーロキサバンを服用してもらった。内服直前と2時間後の血液及び母乳を採集し、授乳は内服2時間後に実施した。さらにその2時間後に乳児の血液検体を採取し、血漿と母乳中のリバーロキサバン濃度を測定。母体と乳児の血中リバーロキサバン動態を解析した。
その結果、同薬剤は授乳婦に対して安全に投与可能であることが示唆された。乳児からはこの薬品が検出されず、3カ月間副作用が見られなかった。さらに、母乳から算出した乳児の薬物摂取量も極めて少なく、1日8回の授乳を5日間行っても定量限界で維持されることが示されている。
尾野教授らは「授乳婦にリバーロキサンを安心して使用する事も可能となり、授乳婦への薬剤投与に関する大きな負担の軽減となり、その意義は大変大きい」と評価。「さらに多くの患者で研究することも大切であり、今後、多数の施設が参画するより大規模な研究を行うことも検討している」と説明している。