慶應義塾大学の有田誠教授や理化学研究所のグループは、加齢に伴って起こる多様な脂質代謝の変化をさまざまな臓器、性別の違い、腸内細菌の有無など多角的な観点から捉え、加齢代謝変容とその分子機序の一端を明らかにした。人の加齢に伴う脂質代謝変容と疾患リスクの理解につながると考えられている。
「年を取ると代謝が落ちる」というように、年齢によって代謝の質や量は変わる。中でも脂質代謝物は細胞機能と関連すると予想されるが、これまで網羅的に捉えた研究はほとんどなかった。それを知るための分析を実行したという。
グループは生体試料に含まれる脂質代謝物の構造とその存在量を捉える「ノンターゲットリピドミクス」という手法を開発。老化の進みは雌雄や臓器、健康状態によって異なる。性別と健康が異なるマウスを対象に13組織の同手法を使った解析を実施した。
それによると、たんぱく質輸送の役割を果たす「ビス(BMP)」が腎臓と肝臓、肺など6臓器で加齢によって増加することが判明した。また、脂質「スルフォノリピッド」が糞便や多くの臓器から検出されることを突き止めている。糖脂質の上昇も認めた。
有田教授らは「脂質は生命活動に必須の分子であるため、老化によって脂質代謝が変わるとさまざまな細胞連携が変化する」と予想。「今回捉えた脂質代謝の加齢による変容がいつ、どこで、どのように起こるのかを明らかにしていきたい」としている。