高知大学の足立真佐雄教授らの研究グループは、海産微細藻類の細胞内部において共生関係にあると考えられてきた「シアノバクテリア」が細胞内小器官化(オルガネラ化)していることを明らかにし、分化の途上にある「ニトロプラスト」の存在を提唱した。
海産の単細胞微細藻類であるハプト藻「ブラルドスフェラ・ビゲロウィアイ(B.ビゲロウィアイ)」は、細胞内部に「UCYN-A」と呼ばれる窒素固定型のシアノバクテリア由来の構造を持つことが知られている。
研究では高知県産のところてんを材料に開発された培地を用いてUCYN-Aを維持した状態のB.ビゲロウィアイの単利培養株を確立。その安定培養に初めて成功している。培養株を用いて、軟X線を利用した三次元構造解析を行った結果、UCYN–Aは宿主であるB.ビゲロウィアイの細胞内で、分裂に同調して倍加して、娘細胞に受け継がれる様子が観察された。
UCYN-Aの分裂が、B.ビゲロウィアイの細胞周期に組み込まれて制御されていることを示している。さらに、B.ビゲロウィアイの核コードタンパク質がUCYN–Aの内部から多数確認され、B.ビゲロウィアイからUCYN–Aへのタンパク質の輸送が行われていると認められている。
これらの結果から、B.ビゲロウィアイ細胞のシアノバクテリア由来のUCYN–Aのオルガネラ化が進行していることが示された。このUCYN-Aは、窒素固定に関わるオルガネラとして分化の途上にあるニトロプラストであると提唱するに至ったという。
研究グループは「ニトロブラストのメカニズムが明らかになれば、農業上重要な植物への窒素固定能の付与による、窒素肥料の必要がない食用植物の創生への道が開かれることも期待される」と評している。