群馬大学と静岡大学、名古屋大学など5機関からなる共同研究グループは、炭素原子のX線吸収の計測および理論計算による分析を通じて、ホタルの発光色に関わる「ホタルルシフェリン」のフェノール性水酸基からの脱プロトン化が水素イオン濃度指数(pH)の変化により生じる様子を明らかにした。
研究では、分子構造の変化を捉える方法として、物質の特定原子周辺の化学状態を観測できるX線吸収計測、特に有機分子の基礎となる炭素原子の内殻励起を利用する炭素原子X線吸収計測に着目した。
従来、溶媒中の有機分子を構成する炭素原子のX線吸収計測は技術的に困難であったが、本研究では厚さ可変の溶液セルシステムを用いることによりこの計測を可能とした。
さらに、pHごとに得られたX線吸収スペクトルピークが、どの炭素の励起状態に対応するかを調べるために、プロトン離脱前後のルシフェリンについて、量子化学計算により溶媒を考慮して電子状態を計算。計測と量子化学計算を組み合わせることで、脱プロトン化を反映する炭素原子X線吸収スペクトルの特徴を特定している。
本研究により、pH変化に伴いルシフェリンが示す構造変化を炭素原子X線吸収スペクトルの変化として捉えることが可能であると実証されている。発光現象の不思議という視点での発光メカニズム解明の基礎研究は、生体計測における技術開発への貢献につながるという。