(左)イリオモテヤマネコ(右)カンムリワシ
琉球大学の伊澤雅子教授らの研究グループは沖縄県西表島に生息する天然記念物「イリオモテヤマネコ」と「カンムリワシ」の食性を解明し、種間の共存機構の一端を解明した。西表島の生態系全体の保全にも貢献しそうだ。
胃と糞の内容物の目視観察や採餌行動の直接観察による従来研究によると、両種ともに脊椎動物から無脊椎動物までさまざま動物を食べ、さらに2種の間で利用するエサ品目は共通するものが多いことが分かっている。同じ場所に存在し、近いものを食べているため食材を巡る競争が起きると考えてその有無を調べた。
研究グループは夏と冬の西表島で、イリオモテヤマネコとカンムリワシのフンを直接採集した。DNAを抽出し、配列を解読した後、配列の情報をもとにそれぞれのエサ動物を特定している。
その結果、エサ動物の構成内容が両季節ともに種間で有意に異なることが判明した。さらに、先行研究と同様にいくつかの生き物については、2種の間で重複して検出されたが、そのほとんどで出現頻度が有意に異なることが分かった。
イリオモテヤマネコもカンムリワシも、多様な動物を食べることができるが、実際に利用する生物の頻度には異なる傾向があることが示唆された。このような違いが、両種の間に生じる競合を避け、西表島のような小さな島での共存を可能にしていると考えられている。
伊澤教授らは「今後は経年的な食性の変遷を分析していくことで、より詳細な共存機構の解明につながる」と説明。「食性を長期的にモニタリングしていくことは、西表島の生態系全体の保全にも大きく貢献する」とコメントしている。