立命館大学の笠原賢洋教授らの研究グループは、東京大学など3大学と共同でゼニゴケにおいて、精子の運動性を制御するサイクリックAMP(cAMP)シグナル伝達系が精子の運動性に重要な役割を果たすことを明らかにした。cAMPシグナル伝達系が大きな意味をもつことは、植物と動物で共通していることが新たに分かっている。
動物やバクテリアなど幅広い生物において、cAMPは細胞内シグナル伝達物質として働くことが知られているが、植物の役割は不明瞭であった。ゼニゴケは動物のように有性生殖をする植物。研究グループはcAMPシグナル伝達系因子が、精子をつくる植物において存在する点に着目し、陸上植物における役割を調べた。
グループは精子をつくる陸上植物に保存されているcAMPを合成および分解する酵素(CAPE)に注目。CAPEの機能を欠損させたゼニゴケを作製、解析した。
すると、CAPEの機能を失っても、精子の形は正常であったが、直線的に泳ぐことができず卵にたどり着けなくなることが分かっている。さらに、cAMPの主要なターゲットであるcAMP依存性リン酸化酵素(PKA)の機能を欠損させた株も、精子の運動性が低下することが明らかになった。
研究グループは「ゼニゴケにおいてCAPEとPKAという2つのcAMPシグナル伝達系因子が精子の遊泳を制御するために重要である」とし「植物において精子の運動をコントロールする分子メカニズムを理解する上で重要であり、また、これまで議論の的であった植物におけるcAMPの役割について道を拓く成果につながる」と評価している。