広島大学の中野由紀子教授らのグループは、歯周炎の定量化指標である歯周炎症面積(PISA)が術後の心房細動再発に関連することを明かにした。重度歯周炎の患者は術後3カ月以内に標準的な治療をすることで、心房細動再発が抑制される可能性があるとしている。
歯周炎は世界で最も有病率の高い感染症であり、全身性の炎症を引き起こし、動脈硬化、糖尿病、リウマチなどの全身疾患に影響する。だが、歯周炎は心房細動の危険因子とは位置づけられていない。研究グループは歯周炎と歯周炎治療が術後の心房細動再発に及ぼす影響を検討し、患者の健康寿命増進を目指した。
グループは心房細動を治すカテーテルアブレーション治療を受けた患者288人を対象とし術前に歯周組織検査を実施。PISAを測り、希望者には3か月以内に2回の治療を行い再検査した。術後の心房細動再発は12誘導心電図や携帯心電計でフォローアップしている。
97人が歯周炎治療を行い、PISAの改善がみられた。また、治療を受けた患者の心房細動再発率は16.5%だったのに対し、しなかった人は28.3%であった。PISA高値群では、歯周炎が良くなった患者の再発率は2割だったが、そうでない人は約5割に上った。
中野教授らは「歯周炎が心房細動の危険因子であることを示すエビデンスを蓄積し、歯科医師、歯科衛生士が心房細動診療チームに参画することで歯周炎を是正する必要性、心房細動診療における医科歯科連携の重要性についてさらに発信していきたい」と意気込んでいる。