近畿⼤学医学部(⼤阪府⼤阪狭⼭市)臨床医学部⾨研究室(緩和ケアセンター部⾨)の阪本亮講師、内科学教室(⼼療内科部⾨)の⼩⼭敦⼦教授(執筆当時)を中⼼とする研究グループは、吉本興業ホールディングス㈱(⼤阪市)と共同で、昨年4⽉から〝笑い〟を医学的に検証する研究の第2弾に取り組み、がん経験者がお笑いを鑑賞し続けることで、健康関連の⽣活の質と抗酸化能⼒、不安、うつなどを改善する効果がある可能性を⾒出した。
この研究に関する論⽂が、8⽉1⽇に、多分野の国際的な医学雑誌「キュリアス」にオンライン掲載された。
■がん経験者が脅かされる「ストレス」
わが国では、二⼈に一⼈が⽣涯のうち1度はがんに罹患し、三⼈に一⼈ががんで亡くなるといわれている。⼀⽅で、検診による早期発⾒や医療技術・創薬の進歩によって、治療後の⽣存率は向上しており、がんは⻑く付き合っていく慢性病に変化しつつある。
国の第2期がん対策推進基本計画では、〝がんになっても安⼼して暮らせる社会の構築〟と明記されており、治療後の社会⽣活を⻑期的に充実させることが重要と考えられているが、⼗分なサポートが実施されているとは⾔えない。
また、がん経験者は疼痛や疲労、神経障害、再発の恐怖などさまざまなストレスに脅かされていることが多く、⽇常⽣活の機能が衰えることにより、健康関連の⽣活の質が低下しています。⽇々のストレスは体内の酸化ストレスを⾼め、多くの不調につながると考えられていまる。
研究グループは、こうした課題をかかえるがん経験者に対して、〝笑い〟がよい影響を与えるのではと考え、研究を実施。第一弾として、平成29年(2017年)に笑いが「緊張・不安」「怒り・敵意」「疲労」のスコアを改善することを報告した。
■毎日のお笑い鑑賞でうつ改善
今回、研究チームは、がん経験者がお笑いを鑑賞し続けることで、健康関連の⽣活の質、精神状態や酸化ストレス、抗酸化⼒(年齢と共に増える活性酸素の酸化を抑える働き)などへ、どのような影響を与えるかについて調査した。
がん経験者50⼈を対象に、⾃宅などでお笑いのDVDを毎⽇15分以上、4週間鑑賞し、採⾎による酸化ストレス測定とアンケートによる⼼理検査を実施。その結果、毎⽇のお笑い鑑賞に、がん経験者の⽣活の質と抗酸化能⼒、不安、うつを改善する効果がある可能性が⽰唆された。阪本浩志らは、「この研究成果を、笑いによるがん経験者の⽣活の質向上の⼿法確⽴などにつなげていきたい」としている。
この研究は、近畿⼤と吉本興業が平成28年(2016年)12⽉に締結した包括連携協定および近畿⼤学の「〝オール近⼤〝新型コロナウイルス感染症対策⽀援プロジェクト」の⼀環として実施された。