星の赤ちゃんから「くしゃみ」によって磁束が放出される様子の想像図
九州大学の徳田一起特任助教らの研究チームは、地球から約450光年の場所にある「MC27」という分子雲コアに潜む原始星(赤ちゃん星)をアルマ望遠鏡で観測した。その結果、星を取り巻く円盤から数天文単位の大きさを持つ「棘(とげ)」のようなものが世界で初めて見つかった。11日付の学術誌「アストロフィジカルジャーナル」に掲載されている。
赤ちゃん星が誕生する過程では、ひもにも似た磁場である磁束が取り入れられるが、全て入れれば太陽などの原子星よりも何桁も大きな磁力となるため、これを捨て去る必要がある。長い時間をかけて、星の周りの円盤を通してなくしていくという考え方が主流であった。
研究チームは、MC27という分子雲コアに潜む赤ちゃん星が、従来の考察とは異なり一気に磁束を捨て去ったと思われる特徴を発見した。高い解像度で観測すると、原始星周囲の円盤から数天文単位の大きさを持つ棘(とげ)が見つかった。
研究チームは理論的な研究との比較から、磁気流体における「交換型不安定性」という現象に着目。これは円盤の縁に磁束が集中した際に、原始星から離れる方向に浮力が働くというもの。短いタイミングで一気に磁束(磁力)を放出することから、ほこりやウイルスを空気とともに一気に押し出す人間の「くしゃみ」にも似ている。
これが起きた瞬間にガスの空洞が作られ、その空洞の端の濃いよどみのガスが棘として見られていると考察した。棘はまさに磁力が抜ける現場を捉えたものであり、過去にも複数回のくしゃみをしていた可能性も浮かび上がっている。
研究チームは「このくしゃみをする条件を、さらに詳しく調べることにより赤ちゃん星の形成過程や惑星のもとの理解が急速に進む」と説明している。