広島大学の澤井努准教授らは胎児組織から作製された初期の脳を模倣する「脳オルガノイド」を巡る規制上の課題を整理。隣接分野の規制との関係性の中で国際的に調和した規制を整備していく必要があると指摘している。
胎児脳オルガノイドは中絶された胎児の脳から得られた組織を培養して作られる。これは多能性幹細胞から作られるヒト脳オルガノイドとは異なり、基になった脳の特徴を保持しており、脳の重要なシグナル分子に反応することが分かっている。「オルガノイドが意識を持つことはないか」など多くの課題が指摘されている。
細胞提供者は同意のもとで研究者らに与えるが、提供者はオルガノイドとつながりを感じやすいという研究がある。澤井准教授らは「脳組織オルガノイド研究においてはさらに丁寧な同意取得が必要」と提言。提供者が複雑な感情を抱える可能性に関する詳細な説明の必要性を伝えている。
また、ヒト胚研究の規制にも言及。妊娠12~15週目の胎児の脳組織から脳オルガノイドが作成された例があるが、ヒト胚を培養する際には受精後14日以上は体の外で、組織を増殖させてはいけない「14日ルール」がある。仮にこれを守れば、その期間に体外で培養できないという。胎児組織研究の国際的規制に向かう議論の必要性を訴えている。
澤井教授らは「胎児脳オルガノイド研究を含め、隣接する分野の規制上の課題にいち早く取り組むことで、研究を支える規制の枠組みを確立することを目指す」と力を込めている。